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ソニー独自のLPWA通信規格ELTRES™を語る ソニー独自のLPWA通信規格ELTRES™を語る

ソニー独自のLPWA通信規格ELTRES™を語る

LPWAの中で先行して知られるSigfoxやLoRa規格に続き、2018年ソニーが独自のLPWA通信規格を発表した。
その名は「ELTRES™」。
今後、更なるIoT化が進む日本で、初の国産LPWAとしてリリースされるELTRES™の魅力について、IoT mobileの最高技術責任者である高江が切り込んだ。
さぁ、一緒にこれからのIoT時代を紐解いてみよう。

ーー 2人の出会いを聴かせてください。
井田 亮太 (以下井田) : 出会ったきっかけは以前ソニーにいらっしゃった方で、今は別のところにいるんですが、その方を高江さんが知ってたんですね。

高江 大作(以下高江) : そうですね。その方からソニーさんのご担当を紹介していただいたんですよね。そこからですよね。そしてそのご担当から井田さんを紹介していただいた流れですね。
ーー お互いの印象は?
井田 : 僕は40半ばで、高江は50半ばですね。そう考えると結構離れていますね。
ーー 井田さんのソニーでの役割は何ですか?
井田 : 僕はエルトレス事業の最初の事業計画を担当しました。元々このLPWAはソニーで以前から技術開発されていて、自分が3年前にソニーに入った時には予算がついてなかった状態だったんですよ。僕は以前、通信キャリアにいたので、その頃はLPWAのLoRaが出だした頃で、アンライセンスが普及していく中で今後はIoTの世界が変わるんじゃないかと思ってたときにソニーがLPWAを作ってると聞いたので、これをやろうと思い2年半前に事業計画を作って予算を組んで立ち上げました。なので、役割でいうと自分は事業計画を作る役割です。あとは事業開発とか。

高江 : その頃からSigfoxやLoRaが世にあった訳ですよね。その中でソニーのLPWAって何か他と違うなって感じがあったんですか?

井田 : そうですね。ソニーって独自規格のものを作るのが得意なのですが、いろいろ話を聞くと内容がとても良かったので、これは凄いと感じましたね。

高江 : 具体的にSigfoxやLoRaと違うと感じた部分はどこですか?

井田 : 通信品質ですね。ソニーはやはりテレビの技術、光ディスクなどの技術を使って丁寧に受信して、且つ時速300キロぐらいまで通信ができるっていうのはとてもいい部分ですよね。
サブギガ帯は解放されているので、込み合うのは見えてるのでそれを見越して作っている点もいいところですよね。


高江 : 将来的に商用化を進めると思いますが、事業を立ち上げるときに回線数の計算はどの様に考えていますか?

井田 : とりあえず国内での市場感で考えています。今後ゆくゆくは海外での展開ももちろん考えていますよ。

高江 : 実はアソディーノにも海外からの問い合わせが多く出てきたんですよ。

井田 : どの辺が多いですか?アジアですか?

高江 : アジア多いですね。日本では水道メータ、ガスメータで使うのってハードル高いじゃないですか。ですけどアジアってまだその辺はバラバラでそこを狙ってる企業は多いですね。海外はまだ2Gや3Gでコストがかかるのでエルトレスでやりたいって声はよく聞きますね。

井田 : そうですか。ヨーロッパってLPWAをかなり使われてるんですけど、アジアってまだまだブルーオーシャンだとは思ってはいますね。ただ、アジアは国が多いので国ごとに規制が微妙に違ってたり周波数帯が違ってたりして課題が多いのも現実なんですよ。
アメリカとかになると、大きな国で一つの規格でいけるんですけど、ヨーロッパもEUでまとまりつつあるんですけど、アジアになるとミャンマー、タイ、シンガポールなんかは色々と大変な部分もありますね。

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ーー エルトレスの特徴を教えてください。
井田 : やっぱり長距離通信の部分でしょうね。それと通信品質がとにかく高いって部分ですかね。あと、移動に強いという部分が一番の特徴だと思います。移動性能ってのは技術的な特徴として、やっぱりきちんと実装できてるっていうのが強いと考えています。移動しながらでも通信ができることで、今後さらなる普及が見込まれるカーシェアリングなどに自分の車がどの辺走っているかを知る事ができるのもいいのではないかと考えています。

高江 : エルトレスは3分に1回通信とのことなんですが、車の移動体で見ると3分に1回だと課題が多いように思うんですけど、この辺はどうお考えですか?

井田 : 確かに詳細な軌跡を取ろうと思うと3分に1回なので不向きだと思いますよ。物流業界の方々と話をすると、特に車両の途中の状態をリアルタイムに知る需要はあんまりないと考えていますね。移動部分で考えるとドローンでの使用を当初は狙っていましたね。

高江 : 商用化に向けて初めに広めたい事業があれば教えてください。

井田 : 色々と並行して走っているんですけど、子供の見守りの需要や、設備監視の需要もありますね。設備監視だと鉄塔の監視だと山の中なので3Gだと入らないのでニーズはありますね。子供の見守りだとビーコンでやっている例をよく耳にしますが、ビーコンの範囲から外れたら難しいですよね。都内でも自治体としてやってるところもあるんですが、隣の自治体に行ったら入らなくなるので大変なんですよ。けどエルトレスだと自治体をまたいでもいいですし広範囲での見守りができますね。

高江 : エルトレスって通信の手段で、それにBluetoothとか、色々なセンサーとかを組み合わせることが必要だ考えてるんですが、Bluetoothが繋がることでもっと細かなデータを習得することができるのかなと思ってるんですよね。

井田 : そうですね。ハイブリットがいちばん現実的だと思いますね。学校なんかに入ったらBluetoothで検知して、屋外ではエルトレスで通信が出来ればいちばん現実的だと思いますね。

高江 : 我々もその方向がいちばん良いのではないかとは思っています。

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ーー 今後、商用化が始まったらパッケージとして売り出すものはあるんですか?
井田 : そうですね。いくつか用意しようとは思っています。例えば見守りパッケージとかいいと思ってますね。やはり売りやすさを考えれば、パッケージ型の方がいいでしょうね。IOTのデバイスって、カスタマイズが多いじゃないですか。色々なセンサーを繋ぐとか。この端末はこれ用っていう端末では今後は難しんじゃないかって思いますね。今は、時間の流れが早いのでどちらかというと開発ボード的なもので、色々な物に繋がりますよっていう方がいいと思いますね。

高江 : そうですよね。我々も元々3Gでそういう端末を作ってきているのでエルトレスもそういう風にしたいと思ってるんですよね。結局、エルトレスは通信の一部ですからエルトレスが使えないときは載せ替えて3Gで通信ができるように臨機応変に対応できるデバイスを開発したいと考えています。
ーー エルトレスのセキュリティの部分はどうお考えですか?
井田 : セキュリティの部分はあまり公開はしてないんですが、通信部分はきちんと暗号化してますよ。エルトレスは片方通信なので3Gのように双方通信ではない分、向こう側から攻撃を受けたりしないっていうのが一番のメリットだと考えてますね。
今よくあるウイルスなんかは、サーバーがやられて攻撃するってのはあるけど、片方通信の場合は問題ないと考えています。
ーー 2020年、今後更に進んでいくIoT時代についてソニーの考えるLPWAについてお聞かせください。
井田 : 今の時代って通信が乱立してるじゃないですか。キャリアのLPWAもあるし、アンライセンスもあるし、お客さんが選ぶの大変だと思いますね。僕がお客さんなら迷いますよね。特に産業向けみたいな長い期間で10年20年使いたいとなると、なおさら迷いますよね。3Gも停波するじゃないですか。IoTって組み込みなので、それを変えなきゃいけなってなったら、世界中にばら撒いた通信モジュールを全部変えるの?ってなるじゃないですか。だから通信は自分でやりたいんだと思うんですよ。ただこれは、資金的体力と技術が必要ですからね。特に鉄道系は鉄道系の独自通信を持ってるじゃないですか。そういう風に他人に依存しない通信ってのは必要な気がしますね。

高江 : エルトレスって片方向通信ですが、今後双方向通信の可能性はありますか?

井田 : あると思いますよ。

高江 : 5年から10年って使った時に、将来的に端末やソフトウェアのバージョンアップを考えた際に、片方向通信だとそれがネックかなって思ってるんですよね。

井田 : そうですね。そこは解かなきゃいけない課題ではありますよね。
今までの歴史を紐解くとM2Mが脈々ときてるじゃないですか、もっというと、サイバーフィジカルネットワークとか。今回、IoT mobileさんが出される展示会IoT/m2m展って昔、ワイヤレスM2M展って呼ばれてたんですよね。その頃のM2MとかIoTとかってキャリアが一強だったというか、IoTって誰のもだっていう議論があって、昔はキャリアだったんですよね。昔はキャリアがM2Mのシムを出してっていう時代だったんですけど、今は時代がどんどん変わってきてて、キャリア側の土管化かがすごく進んでると思うんですよ。
そしてIoTで重要視されてるのってデータじゃないですか。データをどう料理してどういう風に経営とかの方まで活かしていくかって、そっちの方がメインになりますから、IoTにおける通信の重要性っていうのが希薄になってるように思うんですよ。そんな中で出てきたのがLPWAでアンライセンスで広域通信ができるっていうのは今までなかったので、そういう意味でいうとLPWAってこれまでキャリアが一強だったIoTがみんなのものになる大きなきっかけになったような気がしてて、IoTの民主化というか、通信の民主化がLPWAなので、今まではキャリアと契約しないとデータが飛んできませんってなってたのが、自分たちでできるようになるじゃないですか。それがものすごく大きな転換点だと思いますね。LPWAは民主化が進んでる位置付けの様に感じていますね。
ーー 今後、アソディーノグループに期待するところはどんな所ですか?
井田 : 具体化する所ですね。IoTって人によっては割と抽象的な概念だったりすると思うんですけど、アソディーノグループさんは色んな具体的なソリューションをやって来られてるじゃないですか。そういう所がないと、物事って動かないので、そこは僕ら出来ない所ですから。これまでの実績とこれから先のスピード感と具体感を期待しています。

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Profile
井田 亮太

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
コネクテッドサービス事業室 室長

1974年生まれ。オーストラリアのコンピューターサイエンス卒業。2002年オーストラリアIBM入社。2006年日本に帰国後、2007年ゼブラテクノロジーズ入社。この頃からIoTに携わり、リアルタイムロケーションシステム、空港のグランドハンドリング向けの車両の遠隔監視開発に携わる。2012年ボーダフォン入社。M2M事業開発を担当。2014年ユーロテック入社。2016年SONY入社。

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高江 大作

ASODUINO GROUP
IoT mobile株式会社 最高技術責任者

1965年生まれ。熊本県熊本市出身。熊本工大高等学校卒業後、NEC九州株式会社へ入社。製造部や生産システム部などを経験し、2008年オーディエンスサイバージャパンを設立。現在はアソディーノグループの代表として、株式会社ライズナー、IoT mobile株式会社を取りまとめている。

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